2017/08/31

テーマ:介護職員 求人

介護職員に求められる”普通”とは

採用・育成に悩む介護施設・病院担当者から求人の相談をもらう際、”普通の人”という条件を提示されることは意外と多い。もう少し深堀りしてみると、高望みはしないからどうにかして人を集めて来てもらいたいというひとつの基準としての”普通の人”と、”普通ではない人”を採用して来てしまった過ちをこれ以上繰り返したくないという二元論としての”普通の人”。大きく分けると”普通の人”にも2種類あり(もちろん全てがあてはまる訳ではない)、前者と後者とでは人材の捉え方や職場の状況には大きな違いがある。

 

前者のような介護施設・病院については、どこも人手不足な状況だけに、気持ちだけは痛いほど伝わって来る。しかしながら、多様性に富んだ今の時代、”普通の人”の基準とは一体どこで測ればいいのかわかり難い。人材を紹介・派遣する会社としては、当人を知れば知るほど、付き合いが長くなれば長くなるほど、他の人との違いが鮮明になり、”普通の人”としては捉え難くなる。それは決して悪い意味ではなく、それこそが個性である。前者が安易に”普通の人”を基準にしてしまうのは、自分の介護施設・病院で働く介護職員それぞれの個性(趣味や嗜好、特技、休日の過ごし方など)を掴み切れていないからかも知れない。職員それぞれの個性を掴めているなら、まずは”普通の人”の存在を疑えるであろうし、採用・育成がうまく行っている介護施設・病院ほど、思いのほか個性の把握に努めていることが多い。前者に足らないのは、人であるよりも先に、今いる介護職員との対話である可能性が高い。実際、人材派遣・紹介会社にはその脈絡(うちの施設にはお酒好きが多いなどでも構わない)で求人の相談をしてくれた方が、転職相談者にも声掛けがし易い(渋谷の交差点のど真ん中で、誰か話を聞いてくれませんか?と闇雲に叫ぶより、そこのサングラスしたGパン履いてるお兄さん話を聞いてくれませんか?と声掛けした方が確実に足を止めてもらえるのと似た理屈)。

 

少々問題の根が深いと感じるのは後者である。”普通の人”を求める発言の裏には、人材を”普通の人”か”普通ではない人”かに安易にジャッジしてしまう求人担当者側に染み付いた癖があり、さらには、事業がうまく回らない理由を”普通ではない人”と決め付けた介護職員に責任転嫁している可能性が高いからである。後者のような介護施設・病院にとっての”普通の人”とは、「言われたことだけまずはやってくれる人」(なぜかと聞けば、うちにはうちのやり方がある。経験を振りかざして勝手に介護する人は指導し切れないからと)、「”普通”(ここでも更に)にコミュニケーションの取れる人」(みんな忙しい。わからないことがあれば自分から聞きに来て欲しいからと)、「空気を読んで動ける人」(うちには経験者が少なく、介護のマニュアルもあまり整備されていない。自分の頭で考えて動いて欲しいからと)を指すことが多いようである。何やら矛盾めいた”普通”が多いのも特徴のひとつであるが、、、要するに、介護施設・病院側の課題には目をつぶって都合よく動いてくれる人が”普通の人”となり、動いてくれない、もしくはそれらの課題が気になってうまく動けない人は”普通ではない人”扱いされてしまうのである。どこの介護施設・病院も課題をすぐに解決できるほどの余裕がないことは理解できるが、これでは”普通”を求められる介護職員があまりに気の毒である。

 

とどのつまり、”普通の人”の枠組みとは、人それぞれの主観に過ぎないことがわかる。採用・育成する側にとっての”普通”とは、自分たちの理屈を通したい時、もしくは自分たちの立場を正当化したい時の枕詞にもなり易い(他に、”常識”、”当然”、”当たり前”、”一般的”、etc)。最近は介護職員の質が劣化しているといったニュースがよく流れるからか、介護業界全体として、大半の問題は介護職員の質にあるという他責思考が蔓延している。介護現場で何か自分たちにとって不都合なことが起きてしまうと、それらは全て”普通ではない人”の問題として処理されてしまいがちである。もちろん働く側の介護職員に問題はないなどといった妄言を吐くつもりはない。今の質に留まっていては、恐らくは安心して介護サービスを受けられる超高齢社会は訪れない。ただ、医療・介護保険制度上、自分たちの課題を改善するのは無理であると早くから白旗を上げてしまっている介護施設・病院が多い中、(努力している介護施設・病院もたくさん知っているだけに)起きている問題のほとんどを介護職員の質のせいにしてしまうのはフェアでないと感じることは多い。自分にとっての”普通”があるように、相手にとっても”普通”がある。採用・育成に悩む介護施設・病院担当者は、まずは、働く介護職員にとっての”普通”がどのようなものであるか想像することから始めてみてはいかがだろうか。