2017/09/13

テーマ:介護職員 転職

介護業界にあってもやっぱり転職は慎重に

日本の産業全体が人手不足状態になりつつあることは前々から言われている。その中にあっても介護業界は特筆すべきものがあり、世間においては離職率の高い業界としても認知されている 。需要(介護サービスを受ける高齢者や介護施設の数)の急激な伸びに対して供給(現場で介護サービスを提供する職員の数)が全く追い付いておらず、更には、収入も介護保険に依存する法人や事業所がほとんどであることから(≒辞めてからの選択肢が多く、待遇面においても他の会社と大きな差がつき難い)、人手不足にプラスして、介護職員が辞め易い環境が整っていると言っても過言ではない。介護業界の重鎮と言われるような方々でさえ、売り手市場であることを理由に転職を勧めるような発言を繰り返していることから(質の悪い介護サービスを提供している事業所からは足を洗うべき、自分に合った職場を徹底的に探すべきなど) 、転職に対する心理的ハードルは他の業界に比べて圧倒的に低いのではないかと思われる。

 

介護職員が離職してしまう主な理由としては、職場の人間関係や法人経営のあり方などに問題があるとされている(介護労働安定ンター調べ)。確かにそれらが主たる理由であろうことは、実際に転職相談に来る登録者の話を聞いていて我々も感じている。ただ、最近は、安易に退職(≒転職)を選んでしまう介護職が増え来ていることも確かである。果たしてその転職にプラスの要素はあるのかと疑問に感じるような場面に遭遇することは多い。先日もとある特別養護老人ホームの施設長から、「問題行為のあったユニットリーダーを注意したところ、そのユニットにいる介護職のほぼ全員に辞められてしまうことになってしまった。交渉はしてみたが、引継ぎの時間も取ってもらえない。どうにか急ぎで新しい人材を工面してもらえないか」と相談を受けたばかりである。


多くの介護職の転職場面を見て来てわかり始めたのは、たとえ離職率の高い介護業界にあっても、実際の転職には良し悪しがあるということである。成功している介護職がいる半面、失敗(に見えてしまうような転職)を繰り返している介護職も同じくらいいる。そこの境目については我々のように実際に介護現場に足を運び、対面で人材派遣・紹介事業を行う会社でなければアドバイスできないことは多いように感じている。アドバイスと言えるほどのものではないにしても、我々は縁のできた介護職の人たちに安心して長く働き続けてもらいたいという強い思いを持っている。失敗を繰り返してしまう介護職にとっては耳の痛い内容になるかも知れないが、それらの思いを以下3点に整理してみたい。

 

【転職するしないは自分の意思で選んだ方がいい】

前述した特別養護老人ホームのように、介護業界には、負の感情を振りかざして同僚の介護職を引き連れて辞めようとする人が少なくない。そのような人は、周りのメンバーを巻き込んで退職することで、自身の退職を正当化することが最大の目的となってしまっている。それぞれにとっての生活があることを考えれば、その人を思えば思うほど、安易に退職を促すことなどできるはずがない。それに、次の職場にまとまって入職したとしても(実際にそのような形で受け入れる介護施設も多い)、負の感情でまとまった仲間意識などそう長くは続かないものである。雰囲気に流されて転職したことを、今にして思えば辞めてしまったその介護施設は自分にとっては働き易かったと後悔している介護職に出会うことは多い。人生は選択の連続である。仕事の選択に他人の負の感情を絡めていいことは恐らくない。転職は(しないこと含めて) 自分の意思で選んだ方がいい。

 

【後ろ足で砂をかけるような辞め方はしない方がいい】

続く話として。注意されたことの腹いせに、突然辞めるなどして、法人や職場に迷惑を掛けて辞めようとする介護職は少なくない。介護業界は広いように見えて実は狭い。働く人たちの流動性が高いこともあり、次に選んだ職場にそのような辞め方をしたことを知る関係者が絶対にいないとは限らない。うわさ話や迷惑を掛ける範囲が自分の想像を超えていることもある。 働き易い職場に”縁”のある介護職は、辞める時の”縁”も大事にしている人が多い。数年前に勤めていた法人に声を掛けられ元の職場に戻る人もいれば、紹介された知人の介護事業所で要職に就いて活躍している人もいる。これからも続く介護での職業人生、今辞めようとしている職場関係者にお世話になる可能性はゼロではない。どんな状況であれ、やはり失礼な辞め方は控えた方がいい。

 

【自分を裏切るような辞め方はしない方がいい】

これも続く話になるが、恐らくはこれが一番重要である。利用者本意と言い続けて来たのに、何よりもその思いを大事に介護して来たのに、法人幹部や上司との衝突によって、全く利用者本意ではない(引継ぎの期間を設けない、突然来なくなるなどの)辞め方をしてしまう介護職は少なくない。たとえそれらに正当性が認められたとしても、実際のところ、自分が介護して来た利用者に害が及んでしまう可能性が高い。それらの行為は、介護職としての自分のプライドを自ら傷付けてしまうことと同じである。時が過ぎてから、そのような辞め方をしてしまったことを後悔している介護職にお会いすることは多い。もちろん後悔などせず、同じような辞め方を繰り返している介護職もいるが、そのような人が働き易い職場にありつけているといった話は10年事業をしていて聞いたことがない。やはり介護職としての自分の価値を棄損するような辞め方はしない方がいい。

 

「転職は慎重に」。随分前に大手求人広告会社が使用したキャッチコピーではあるが(それなりの年齢の人であれば覚えている人は多いかも知れない)、まさにそんな思いが日に日に増している。 介護の職場の人間関係は、自らの働き掛けで変化することは決して少なくない。壁を作られている相手の原因は、ひょっとしたら自分にもあるかも知れない。法人経営のあり方も、経営者は利益を考えて当たり前である。介護の質よりもお金のことばかり考えているように見えてしまうのは、ひょっとしたら自分たち介護職員の待遇を少しでも上げたいと思ってくれているからかも知れない。見方を変えてみたら、自分にとってはまだまだ成長のできる介護の職場であり、今のタイミングでは転職しない方がいいのかも知れない。とりとめのない内容になってしまったが、最後に「失われた時を求めて」のマルセル・プルーストの言葉で締め括ることにする。

 

真の発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。